事業用定期借地の選択には慎重さが求められます。そのリスクと注意点を明確に解説

目次

事業用定期借地権の危険性

1. 中途解約の困難さ

事業用定期借地契約は、貸主が中途解約することが非常に困難です。これは借主の安定した使用権を保護するための措置ですが、その結果として、貸主は契約期間中に他の有利な土地活用の機会があっても利用することができません。たとえば、市場状況が変わり、より高収益のプロジェクトが可能になった場合でも、既存の契約が終了するまで待たなければならないため、機会損失が発生します。

2. 借主の破綻時のリスク

借主が事業を行っている間に破綻すると、その土地と建物の取り扱いが問題となります。通常、建物の撤去や更地への復帰には高額なコストがかかるため、これが貸主に負担となります。建物が借主名義の場合、解体するには借主の同意が必要であり、そのプロセスが複雑かつコストがかかる可能性があります。

3. テナントの問題

建築会社やハウスメーカーは、事業用定期借地が利益を生みにくいと感じているため、このような土地活用を積極的に提案しない傾向にあります。これは、テナントを見つけ、賃貸条件をまとめるためのコストと労力がかかるにもかかわらず、最終的な収益が限定的であるためです。結果として、土地主が高品質のテナントや有利な条件を獲得する機会が減少します。

4. リース会社を介した借地の問題

一部の地主は、リース会社を通じてテナントに貸し出すことで、直接契約の煩雑さを避けようとします。しかし、この方法では、建築費用が適切に管理されない場合が多く、結果的に建築費が予算を大幅に超えることがあります。高くついた建築コストは、最終的に賃料を通じて地主に転嫁され、利益減少につながります。

事業用定期借地権、よくある質問(契約、覚書、公正証書)

1. 契約形態

事業用定期借地権の契約は、公正証書を介して行われます。公正証書の締結は、一般的にテナントが建設工事を開始する時期に合わせて行われますが、テナントによっては工事完了やオープン直前に締結される場合もあります。公正証書は法的な強制力を持ち、契約の正式な形態を提供します。

2. 覚書の役割

覚書は公正証書作成前の予備段階として作成され、契約の詳細を概説します。この覚書は、実際の契約書ではありませんが、公正証書を作成する際の基盤となります。覚書は、工事着手前に地主とテナント間で合意された事項を記録し、これを公証人が公正証書に反映させるための重要な文書です。

3. 契約書の複雑さと量

地主からは、覚書や契約書が複雑であり、量が少ないと感じられることがあります。これは、事業用定期借地権が借地借家法の特定条項(たとえば、契約更新権や購入請求権)の適用を除外しているためです。これらの法的な特例が、契約書を煩雑に見せる一因となっています。

4. 特定条項の適用除外

事業用定期借地権契約では、借地借家法の第3条から第8条、第13条及び第18条の適用が除外されます。これにより、一般の借地権とは異なる条件で土地が借りられ、例えば、テナントは契約終了時に土地を更地にして返さなければならない等の特別な規定が設けられます。

5. 覚書と建物賃貸借契約の比較

事業用定期借地権の覚書は、一般的な建物賃貸借契約書と比較して内容が簡略化されています。これは、事業用定期借地権契約がテナントによる建物の所有と管理責任を前提としているため、契約終了時の原状回復や建物の改修に関する規定が含まれないためです。

いまさら聞けない「事業用定期借地」基本中の基本

1. 歴史的背景と制定の理由

  • 制定年と法的変遷:事業用定期借地権は、1992年(平成4年)に新しい借地借家法の一環として制定されました。これは旧借地法(大正時代に制定)が土地の永続的な貸し出しを前提としており、土地が原状に戻ることが難しい状況を改善するためのものです。
  • 旧借地法との違い:旧借地法下では土地の利用権が非常に強固で、土地所有者が容易に土地を回収することができませんでした。新法では土地所有者の権利が強化され、よりフレキシブルな土地利用が可能になりました。

2. 定期借地権の種類

  • 一般定期借地権:50年以上の長期契約で、居住用だけでなく商業用にも使用可能。
  • 事業用定期借地権:10年以上50年未満の契約期間で、専ら商業用に限定されています。
  • 建物譲渡特約付き借地権:30年以上の契約期間で、契約終了時に建物を土地所有者に譲渡する特約が付いています。

3. 事業用定期借地権の契約特性

  • 公正証書による契約:契約は公正証書によって正式に記録され、法的な保護と明確性が保証されます。
  • 契約更新の禁止:事業用定期借地権は更新を前提としないため、契約期間終了後は土地が自動的に土地所有者に戻ります。
  • 建物買取請求の不許可:テナントは契約終了時に建物を買い取る権利を持たず、土地は更地にして返さなければなりません。

4. 土地所有者にとってのメリット

  • 初期投資不要:土地所有者は建物の建設やその他の初期投資を行う必要がありません。
  • 土地の確実な回収:契約期間が終了すれば土地は確実に所有者に戻るため、長期的な土地利用計画が立てやすい。

不動産業者の罠

1. 事業用定期借地権の基本的なメリット

  • 契約の明確性: 事業用定期借地権は借地借家法に基づき、契約期間が終了すると借地関係が確定的に終了し、土地が地主に返還されます。これは、一般的な借地権と異なり、地主が土地を再び自由に使えるようになるための法的保証があります。
  • 自己資金不要: 地主はテナントに土地を貸すだけで良く、自己の資金を投じる必要がありません。これにより、建築や初期投資のリスクから解放され、資金的な負担が軽減されます。

2. 潜在的な罠とリスク

  • 高額な建築費: 建築会社が地主に対して提案する建築費用が過剰に高い場合があります。特に事業用定期借地でテナントが直接建築会社に工事を依頼する構造では、地主が建築費の詳細を把握しにくく、不当に高い建築費で契約が結ばれることがあります。
  • リース会社を介した契約: 建築会社やリース会社が介在することで、その間に発生する追加コストが地主に不利に働くことがあります。リース会社が中間マージンを取ることで、最終的に地主が受け取る賃料が減少します。
  • テナントの選定: 建築会社がテナントを紹介する場合、地主はそのテナントに対して直接の影響力を持たないことが多く、テナントの質や事業の安定性が保証されない場合があります。また、リース会社がテナントを見つけるという場合、地主はテナントと直接交渉する機会を失う可能性があります。

3. 地主が注意すべき点

  • 契約内容の透明性: 地主は契約を結ぶ際に、すべての費用項目と契約条件を明確に理解し、不利な条件については交渉するべきです。
  • テナントとの直接契約の重要性: 最も理想的な形は、地主がテナントと直接契約を行うことです。これにより、リース会社や他の中間業者を介さずに、直接的な利益とコントロールを保持できます。

造成費や解体費は、地主とテナントどちらの負担?

1. 造成費や解体費の負担について

  • 質問: 農地を事業用定期借地としてテナントに貸し出す際、造成費は地主が負担する必要があるのか?
  • 回答: 造成費や解体費の負担は、地主とテナント間で自由に契約で決定できます。一部の場合、地主がこれらの費用を負担し、テナントは更地から借りるケースが多いですが、必ずしも地主が負担するわけではありません。

2. 工事中の地代について

  • 質問: 事業用定期借地でテナントが建築工事を行う際、工事中も地代は発生するのか?
  • 回答: 一般的には、事業用定期借地の場合、テナントが建築工事を行うときには工事中も地代が発生することが多いです。しかし、これも地主とテナント間の契約次第で、オープン時から地代が発生するように合意することも可能です。

借地権の公正証書の詳細

公正証書の重要性

  1. 強力な証拠力:公正証書は裁判時の立証が不要となるほど強力な証拠力を持ちます。
  2. 紛失・偽造防止:公正証書の原本は公証役場に保管されるため、紛失や偽造の心配がありません。
  3. 強制執行の可能性:公正証書には強制執行に同意する条項を含めることができ、これにより相手方が金銭債務を履行しない場合、訴訟を起こさずに直接財産を差し押さえることが可能です。

公正証書の作成手順

  1. 契約書の準備:公正証書を作成するためには、元となる契約書や覚書が必要です。これを公証役場に提出します。
  2. 公証役場での確認と調整:提出された文書は公証役場で確認され、公正証書の草案に基づいて修正が行われます。貸主と借主はこの草案をチェックし、最終的な内容に同意します。
  3. 公正証書の署名と保管:最終的な草案に基づき、貸主と借主が公証役場で公正証書に署名と捺印を行います。完成した公正証書は公証役場に保管され、各当事者はコピーを受け取ります。

公正証書作成の費用

  • 基本手数料:手数料は契約の総額に基づいて計算され、例えば月額賃料が8万円で借地期間が50年の場合、目的価額は1920万円となり、基本手数料は23,000円です。
  • 追加費用:公正証書のページ数が多い場合、追加の交付手数料が発生します。また、印紙代や製本費用も加算される場合があります。
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